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「ゆかりの鏡って知ってるか?」
兄ちゃんがどうしてそんな事聞いたか、僕には最初分からなかった。
「二十歳まで覚えてると死ぬって話?紫の鏡じゃないの?」
「紫はゆかりとも読めるだろ。元々は縁の字だった。読みが一緒で間違えられた」
目の前には波のない川。山の色が逆さに映って、緑の鏡みたいだ。
「死ぬんじゃない、繋ぐんだ。あっちとこっちの縁を繋いで逆転する。……今なら帰れる」
「駄目。駄目だよそんなの」
足元でじゃりが鳴った。後ずさった拍子に石ころが転げ落ちて、緑の鏡が川に戻る。怖い、怒った目をした兄ちゃん。いつから何でここにいるのか思い出せない、でもそんな事したら――
「無理だ。数が合わない」
「無理じゃない、身代わりがいれば」
唇は笑った様に見えた。
――どん。胸を押され、僕は川に落ちた。しびれるくらい冷たい水が、喉から鼻から流れ込む。
浮かぼうとする頭を、兄ちゃんの腕が水中へ押し込んだ。
兄ちゃんがどうしてそんな事聞いたか、僕には最初分からなかった。
「二十歳まで覚えてると死ぬって話?紫の鏡じゃないの?」
「紫はゆかりとも読めるだろ。元々は縁の字だった。読みが一緒で間違えられた」
目の前には波のない川。山の色が逆さに映って、緑の鏡みたいだ。
「死ぬんじゃない、繋ぐんだ。あっちとこっちの縁を繋いで逆転する。……今なら帰れる」
「駄目。駄目だよそんなの」
足元でじゃりが鳴った。後ずさった拍子に石ころが転げ落ちて、緑の鏡が川に戻る。怖い、怒った目をした兄ちゃん。いつから何でここにいるのか思い出せない、でもそんな事したら――
「無理だ。数が合わない」
「無理じゃない、身代わりがいれば」
唇は笑った様に見えた。
――どん。胸を押され、僕は川に落ちた。しびれるくらい冷たい水が、喉から鼻から流れ込む。
浮かぼうとする頭を、兄ちゃんの腕が水中へ押し込んだ。
ファンタジー
公開:20/11/09 14:00
縁~ゆかり
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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