三味線と猫

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三味線が欲しかった。貧乏なので買えなかった。仕方がないので野良猫をとっつかまえてきて板にしばりつけ、糸を張ってベンベン鳴らしていた。
猫はギャーギャー鳴いて暴れたが、お構いなしにベンベン鳴らし端唄を唄ったりした。

ある日、隙をついて猫が逃げた。

1年後、道の向こうから三味線が歩いてきた。よく見ると子猫が三味線を背負ってずるずる引きずりながらやってくる。顔の模様が逃げた猫とそっくりだった。そして三味線の皮にも同じ模様があった。

どんな音がするのだろう。三味線を取り上げると、子猫を縛り付けてベンベン鳴らしてみた。子猫がギャーと鳴いた。
ベンベン。ギャーギャー。ベンベベン。フギャーギャー。

道端でやっていると人が大勢集まり、投げ銭がたくさん集まった。
よし、ご褒美だ。高級な鰹節を買う。猫まんまを入れたお皿を二つ並べ、子猫の横に三味線を置いた。

翌朝、子猫と三味線は居なくなっていた。
その他
公開:20/11/09 13:05
ゆかり

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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