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家の近くに大きな湖がある。
退職してからは、より頻繁に訪れるようになった。
山間から顔を出す朝日、光に照らされてキラキラと輝く水面の美しさは名状し難い。
この世界が偶然誕生したものなのだとしたら、偶然とは神の同義語ではないのか。

遠く湖上に、小さな水鳥たちを見つける。僕はいつものように小型の双眼鏡を取り出して覗き込んだ。

彼ら(あるいは彼女ら)は首をくいくいとせわしなく動かして、くちばしの先で体毛を繕っている。ある一羽が翼をばたつかせ、水しぶきを上げる。

と、そのとき、視界の中を何かが過ぎった。
僕は思わず双眼鏡から目を離した。だが、何も見えない。点になった鳥たちが、変わらず遊んでいる。

もう一度、双眼鏡を覗き込む。
黒い影。人型だ。人が、湖上で踊っている。

その話を妻にすると、彼女は言った。
「子供の頃、見たことがあるわ。私は神様だって、ずっと思ってた」

僕もそう信じている。
その他
公開:20/11/10 07:00
更新:20/11/09 06:28

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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