17
7
「あちらのお客様からです」
バーカウンターの上を、茶碗が滑ってきた。僕の目の前で停止したその茶碗の中には、アツアツのお茶漬け。店員が示した方向を見ると、カウンター席の左端で老人が背中を丸めて座っていた。
彼が、このお茶漬けを……?
「爺さん。悪いけど、お茶漬けを食べたい気分じゃないんだ」
だが、老人は応じない。酔っているのか、ボンヤリした表情でこちらを見つめている。その眼の瞳孔には、うっすらと青い光が宿っていた。
青。
改めてお茶漬けを見ると、茶碗を満たすお茶も米も、海底を想起させる濃い青色に変色している。脳内をかき混ぜられるような、異様な香り。
……綺麗だ。食べてしまいたいくらい。
我慢できず、お茶漬けを啜る――ずるズる、むシャムしゃ、モぐもグ。
頭がぼーっとする。でも、止まらない。止マラナイ。お替わりをもらおう。
茶碗を受け取った僕は、それを隣の誰かに向けて滑らせた。
バーカウンターの上を、茶碗が滑ってきた。僕の目の前で停止したその茶碗の中には、アツアツのお茶漬け。店員が示した方向を見ると、カウンター席の左端で老人が背中を丸めて座っていた。
彼が、このお茶漬けを……?
「爺さん。悪いけど、お茶漬けを食べたい気分じゃないんだ」
だが、老人は応じない。酔っているのか、ボンヤリした表情でこちらを見つめている。その眼の瞳孔には、うっすらと青い光が宿っていた。
青。
改めてお茶漬けを見ると、茶碗を満たすお茶も米も、海底を想起させる濃い青色に変色している。脳内をかき混ぜられるような、異様な香り。
……綺麗だ。食べてしまいたいくらい。
我慢できず、お茶漬けを啜る――ずるズる、むシャムしゃ、モぐもグ。
頭がぼーっとする。でも、止まらない。止マラナイ。お替わりをもらおう。
茶碗を受け取った僕は、それを隣の誰かに向けて滑らせた。
ホラー
公開:20/11/08 23:04
お茶漬け
「勝手に秋のお茶漬けデー」
11/4~11/13の期間、「勝手に秋のお茶漬けデー」と題しまして、お茶漬けの物語を投稿中!(ストーリーに繋がりはありません)
11/4:「御茶ノ漬駅へようこそ」
11/5:「茶漬湖の底へ」
11/6:「神々しきお茶漬け」
11/7:「お茶漬け勇者の箸と匙」
11/8:「茶漬中毒」
11/9:「米どころ、茶漬けの祟り」
11/10:「茶が先か、卵が先か」
11/11:「檻の中。お茶漬けと一人」
11/12:「お茶漬け博物館」
11/13:「明日のお茶漬け」
お茶漬け、完結。充実したお茶漬けデーになりました……!
Twitter、ゆった~りと更新予定です。
https://twitter.com/dirokichiro?s=09
ログインするとコメントを投稿できます