宝物入れ

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会った仔の毛を集めていた。いつも、私より先に逝ってしまうから。
私が残しておきたいものは、写真にも動画にも残ってくれない。どんなに鮮明な映像があってもその中に私は入れない。だから、DNAを残すことにした。愛しい愛しいDNAを。
それを調理酒の空き瓶に貯めていった。いろんな色や長さの毛が増えていった。
しばらくして気づいた。この瓶、なんか毛が生えてきてないか?触ってみると赤ちゃんの産毛のような触り心地だった。透明だったガラスは不透明になって、中身が見えなくなってきていた。
これはもしかして、私の愛しい仔になるのでは。でも、どの仔に?入れた毛はもう何頭分かもわからない。
毎日毎日話しかけて、沢山撫でて、毛を足した。毛はどんどん豊かになり、瓶はどんどん中身がわからなくなった。
私は待っている。今日も愛で続ける。毛むくじゃらの瓶が動き出し、熱をおびる日を待っている。
その他
公開:20/11/08 21:29

はおはお( 北海道 )

生きる、死ぬ、幸せ、ここにいる意味みたいな難しいことを
軽く、シンプルに、深く
考え続けたいです

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