歪み ドッペルゲンガー篇
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小さな部屋。パイプ椅子しかない。その椅子に座っている若い男。何故か、ニヤニヤしている。ニヤニヤするくらいしかやることが無いらしい。男の背筋がビクッとする。そして大きく息を吐く。一分ほど時間が経つ。またニヤニヤする。その、繰り返しだ。マジックミラー越しにその姿を真剣な顔で見ている同じ顔の男。自分の姿を自分で見ている。男の気分は高揚していた。一匹のアリがパイプ椅子によじ登ろうとする。しかし、滑ってなかなかうまくいかない。でもアリは諦めない。何度もパイプ椅子によじ登ろうとする。気分は高揚している。風が吹く。この部屋には窓は無い。ほんの一瞬、宇宙が歪む。アリは宇宙の歪みを察知して動きを止める。しかし歪みが一瞬で終わったのを確認するとまた、パイプ椅子によじ登り始める。
ファンタジー
公開:20/11/09 16:54
時折、頭をかすめる妄想のカケラを集めて、少しずつ短いお話を書いています。コメントは励みになります。
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