ゆかりの鏡(十二)

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涙が零れていく。とめどなく、後から後から。
「見せたいもの、聞かせたいもの、教えたい事が山程あった。生きてたら経験出来た、生きてる人間しか出来ねぇ事。たった一人の弟に、全部掴んでほしかった」
僕ではなく、兄ちゃんの頬から。
「これ以上、抱え込んで痛い思いしなくていい。忘れて、全部ここに置いて帰れ。……何であの時、そう言ってやれなかったんだろう」
零れた涙の数だけ、重石が消えていく。
「ごめ…なさ、兄……」
僕を水に沈めた手が、僕の頭をそっと撫でた。
僕の手に、本が一冊残った。家族みんなのアルバム。二十回目のプレゼント。
「身代わりとか償いじゃなくて、お前はお前の人生全うしろ。そうすれば、俺も先へ進めるから」
ちゃんと笑った顔を、初めて見たと思った。
積み上がった最後の塔にアルバムを乗せる。供養塔の、足元の、河原じゅうの石が、星くずになって散った。割れた鏡の欠片の様に、きらきら瞬きながら――
ファンタジー
公開:20/11/09 14:11

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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