ゆかりの鏡(十一)

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「死んだ人間を偲ぶなとか、供養なんて無駄とは言わねぇけど、それは区切り付ける為にすんだよ。これ以上重石を増さねぇ様に、お互いを縛らねぇ様に。次へ送り出す為に。……なのに、お前のやってる事は何だ?」
ひっきりなしに、石が溢れていく。重い。苦しい。止めようにも止められない、それは明らかに『僕』の痛みだった。
「誕生日の度、後悔と自己満足の代償行為に耽って。お前から伝わってくんのは全部『僕が』だ。俺なんかこれっぽっちも入ってねぇ。ゆかりじゃなくて、単なる執着でしがらみだ」
身体が石に埋まっていく。ごめん。ごめん。ごめんなさい。繰り返す謝罪は、贖罪は、一体誰に向いていたんだろう。
「そうやって独りぼっち、不幸のどん底で人生潰す気か。俺は死んでんだよ、あん時からとっくに。……いい加減目ぇ覚ませ。お前にこんな思いさせる為に、俺はお前を帰したわけじゃねぇんだよ!!」
胸まで埋め尽くした重石が、止まった。
ファンタジー
公開:20/11/09 14:10

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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