2
3
「そんなつもりじゃなかった」
「じゃあどういうつもりだ?」
あの時と同じ。後ずさる僕を兄ちゃんが追い詰める。今度は川と逆の方へ。
「毎年毎年毎年、何の為にこんな物送りつけた」
石が足に当たる。崩れずには済んだが、つんざく様な大合唱に耳が痛む。
完成した供養塔が一基。その天辺に乗っていたのは、
「……兄ちゃん、これ」
ラジコンヘリ。兄ちゃんが握っていた、僕のヘリではない。ぴかぴかの新品、同じ型の。
誕生日。目覚めた僕が兄ちゃんへ贈った、最初のプレゼント。
『でも、兄ちゃんは僕が嫌いなんだ』
塔でなく、足元の石から聞こえた。
何て醜い、卑屈で恨みがましい声。こんなものを僕は、兄ちゃんに聞かせ続けてきたのか。
ヘリだけでもない。野球のグローブ、ゲームソフト、お菓子、服、本。兄ちゃんの十九基と、向かい合わせにもう二十基。鏡写しの様な、二人分の供養塔。
供養どころか、それはもはや呪いの祭壇だった。
「じゃあどういうつもりだ?」
あの時と同じ。後ずさる僕を兄ちゃんが追い詰める。今度は川と逆の方へ。
「毎年毎年毎年、何の為にこんな物送りつけた」
石が足に当たる。崩れずには済んだが、つんざく様な大合唱に耳が痛む。
完成した供養塔が一基。その天辺に乗っていたのは、
「……兄ちゃん、これ」
ラジコンヘリ。兄ちゃんが握っていた、僕のヘリではない。ぴかぴかの新品、同じ型の。
誕生日。目覚めた僕が兄ちゃんへ贈った、最初のプレゼント。
『でも、兄ちゃんは僕が嫌いなんだ』
塔でなく、足元の石から聞こえた。
何て醜い、卑屈で恨みがましい声。こんなものを僕は、兄ちゃんに聞かせ続けてきたのか。
ヘリだけでもない。野球のグローブ、ゲームソフト、お菓子、服、本。兄ちゃんの十九基と、向かい合わせにもう二十基。鏡写しの様な、二人分の供養塔。
供養どころか、それはもはや呪いの祭壇だった。
ファンタジー
公開:20/11/09 14:09
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
ログインするとコメントを投稿できます