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拾った石が、指を滑って落ちた。
――重い。指でつまめる大きさなのに、腕が痺れる程。両手で支え直し、やっと積もうとして、また落ちた。
『ごめん』
石が喋った。
しゃくり上げる様な甲高い声。子供の僕の声だった。
『全部僕のせい』『僕がいたせいで兄ちゃんは』『身代わりは僕の方』
どの石を持ち上げても、積もうとすると声がする。落とす。拾う。また落とす。耳を塞ぎたいくらいの音量で内容で。
「だから、解ってねぇって言ったんだ」
僕の落とした石を兄ちゃんが拾った。一つ一つ丁寧に拭き、塔に積んでいく。
「石積みは供養なんだよ。自分が先に死んで、悲しませた心、苦しめた時間、返せなかった恩も愛情も、全部浄化されるまで、積み上げて供養しなきゃなんねぇ」
憶えがある。口にはしなくても、心の中で言っていた。この二十年、ずっとずっと。
「お前の傷が癒えねぇ限り、永久にだ」
――カツン。新しい石が、僕の掌から転がった。
――重い。指でつまめる大きさなのに、腕が痺れる程。両手で支え直し、やっと積もうとして、また落ちた。
『ごめん』
石が喋った。
しゃくり上げる様な甲高い声。子供の僕の声だった。
『全部僕のせい』『僕がいたせいで兄ちゃんは』『身代わりは僕の方』
どの石を持ち上げても、積もうとすると声がする。落とす。拾う。また落とす。耳を塞ぎたいくらいの音量で内容で。
「だから、解ってねぇって言ったんだ」
僕の落とした石を兄ちゃんが拾った。一つ一つ丁寧に拭き、塔に積んでいく。
「石積みは供養なんだよ。自分が先に死んで、悲しませた心、苦しめた時間、返せなかった恩も愛情も、全部浄化されるまで、積み上げて供養しなきゃなんねぇ」
憶えがある。口にはしなくても、心の中で言っていた。この二十年、ずっとずっと。
「お前の傷が癒えねぇ限り、永久にだ」
――カツン。新しい石が、僕の掌から転がった。
ファンタジー
公開:20/11/09 14:08
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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