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「やっぱりお前、全然解ってねぇ」
今度の声は、打って変わって静かだった。
「解ってる。ここがどこか、何でここに来たか、全部解ってる」
ゆかりの鏡は、鏡写しの逆さの縁。逆縁――親より早く死んだ子供の堕ちる場所。永遠の石積みを課される、此岸と彼岸の狭間。
「ここは賽の河原だ。逆縁は僕の業で、兄ちゃんが背負うべきものじゃない。僕が生きて帰れた以上、背負う必要だってなかった」
「……それで?」
振り向いた兄ちゃんが、心底呆れた声でつぶやいた。
「お前と入れ替わって、俺に何の得がある。他人の身体で、ろくな思い出も愛着もねぇ家に今更帰って、独りぼっちで死ぬまで暮らす?だったらここにいるのと何が違う」
二十歳から二十回の誕生日。僕は四十になり、父さんは去年、母さんはもっと早くに見送った。他に家族も係累もない、つまり天涯孤独。
「兄ちゃんの好きにすればいい。これで兄ちゃんは自由だ」
足元の石に手を掛けた。
今度の声は、打って変わって静かだった。
「解ってる。ここがどこか、何でここに来たか、全部解ってる」
ゆかりの鏡は、鏡写しの逆さの縁。逆縁――親より早く死んだ子供の堕ちる場所。永遠の石積みを課される、此岸と彼岸の狭間。
「ここは賽の河原だ。逆縁は僕の業で、兄ちゃんが背負うべきものじゃない。僕が生きて帰れた以上、背負う必要だってなかった」
「……それで?」
振り向いた兄ちゃんが、心底呆れた声でつぶやいた。
「お前と入れ替わって、俺に何の得がある。他人の身体で、ろくな思い出も愛着もねぇ家に今更帰って、独りぼっちで死ぬまで暮らす?だったらここにいるのと何が違う」
二十歳から二十回の誕生日。僕は四十になり、父さんは去年、母さんはもっと早くに見送った。他に家族も係累もない、つまり天涯孤独。
「兄ちゃんの好きにすればいい。これで兄ちゃんは自由だ」
足元の石に手を掛けた。
ファンタジー
公開:20/11/09 14:07
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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