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目が覚めた時、病院だった事には驚かなかった。
お母さんの声が、震えた響きで僕を呼ぶ。力いっぱい抱き締められた。
久しぶりに聞いた気がする。お母さんの声ってこんなだっけ?バタバタ騒がしい廊下。川はあんなに静かだったのに。
「……にぃ、ちゃん」
抱き締めた腕がこわばる。
僕が兄ちゃんに嫌われてたなら、兄ちゃんはお母さんに嫌われてた、それは分かってる。お父さんの前の奥さんの連れ子。兄ちゃんだけが家では異分子だった。
分からないのは、声――かすれて低い、僕と全然違う声。
少し押しただけで、お母さんがベッドへ倒れた。違う。違う、そんなはずない。長い腕、広い胸、背は僕よりうんと高い。
「鏡……鏡!」
ベッドの横のテレビ。黒い画面にぼんやり映る。
「兄ちゃん!?」
血相を変えた兄ちゃんの顔が、手を伸ばしかけて固まった。
――ここに一人残れば、片方なら帰れるんだ。
どうして。
身代わりは僕の方なのに。
お母さんの声が、震えた響きで僕を呼ぶ。力いっぱい抱き締められた。
久しぶりに聞いた気がする。お母さんの声ってこんなだっけ?バタバタ騒がしい廊下。川はあんなに静かだったのに。
「……にぃ、ちゃん」
抱き締めた腕がこわばる。
僕が兄ちゃんに嫌われてたなら、兄ちゃんはお母さんに嫌われてた、それは分かってる。お父さんの前の奥さんの連れ子。兄ちゃんだけが家では異分子だった。
分からないのは、声――かすれて低い、僕と全然違う声。
少し押しただけで、お母さんがベッドへ倒れた。違う。違う、そんなはずない。長い腕、広い胸、背は僕よりうんと高い。
「鏡……鏡!」
ベッドの横のテレビ。黒い画面にぼんやり映る。
「兄ちゃん!?」
血相を変えた兄ちゃんの顔が、手を伸ばしかけて固まった。
――ここに一人残れば、片方なら帰れるんだ。
どうして。
身代わりは僕の方なのに。
ファンタジー
公開:20/11/09 14:03
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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