1匹の虫

2
3

1匹の虫が、教室内を飛んでいる。
教師は平坦に喋り続けている。
それを遮ったのは男子生徒の声だった。
「うわ、虫っ!」
数人がそちらを見て、いくつかの小声が立った。
虫はあちこちへ飛び遊ぶが特に彼の周りを彷徨っていた。
「やめろよ!」
はじめは顔を顰めて腕を振っていた彼だったが、やがて抵抗をやめてしまった。小声の波紋もすぐに床へ吸い込まれた。
虫は暫くしていなくなった。

数分後、怪人・虫人間が彼の隣にやって来た。彼はそれを一瞥し、顔を顰めて前へ向き直った。
教師の声はモノトーンを奏で、虫人間は男子の横で踊り始めた。
何か言おうとした生徒がいたが、結局やめた。
怪人も暫くしていなくなった。

数分後、メガネウラが入って来た。
それは鳴き喚きながら火を吹いて、後ろの黒板が焼け落ちた。
誰も気には留めなかった。

「では号令。」
教師が言って授業が終わった。
何の変哲もない日常の途上だった。
その他
公開:20/11/07 21:03
更新:20/11/07 21:04

北瓜 彪

ショートショート講座(2019年7〜9月期)にも参加
しました。
皆様宜しくお願いしますm(_ _)m

※アルファポリス
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/664452356
でも活動しています。SS講座で提出した作品「ファンフラワーに関する見聞」「大自然」もそちらで公開しております。
 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容