星捕り(つづき)

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結局、ぼくは活発に動き回る星を捕まえることができなかった。
悔しがっているぼくにお父さんが言った。
「北の方角を見てごらん。動かない星があるからすぐ捕まえられるよ」
お父さんが指をさす北の夜空を見ると、一つの星が動かずに輝いていた。
ぼくは慎重にアミを近づけると、簡単にその星を捕まえることができた。
「それは『北極星』と呼ばれていて、昔から旅行や航海の道しるべになっている大切な星なんだ。だから、逃してやろうか。夜空から北極星がなくなっちゃうと困るからな」
お父さんの言葉に頷き、ぼくは北極星をアミから放すことにした。
すると今度は、ひときわ鮮やかに光る星を見つけた。
ぼくがアミを振り下ろそうとすると、お父さんは笑いながら言った。
「それは星じゃないよ。国際宇宙ステーションか人工衛星だね。われわれ人間が打ち上げたもので、地球の周りを一定のスピードで回っているんだ」
ぼくは捕まえるのを諦めた。
SF
公開:20/11/07 19:45
『とってもふしぎな創作ドリル』 「ストーリー11 星捕り」 夜空 アミ 北極星 旅行 航海 国際宇宙ステーション 人工衛星

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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