僕らが犯罪者になる日

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宅配ドローンが自動注文された冷凍培養肉を届ける。
男がそれをAI調理器にセットすると、自動調理された培養ハンバーグがほんの十数秒で出来上がる。
フォークでカットして口に運び、無表情で咀嚼する。
余分なカロリーを適切に排出してくれるスマート・ティーを飲みながら、壁と一体化したナチュラル・ライト・ディスプレイで資料映像を見る。

凄惨な殺戮現場の動画が映し出される。何の罪もない生きた動物たちを、恐ろしく残虐なやり方で殺していく。皮を剥がれ逆さ吊りにされた動物たちが、機械の並ぶラインに沿って運ばれていく。

男はタブレットの弁明書にもう一度目を通す。伝統、自然の摂理、畜産業者達の葛藤、消費者の希望、生物としての本質、そんな見飽きた言葉たちが並ぶ。

どんな言い訳を繰り返しても、動物を殺していい理由になどなるわけがない。

男の意思を汲み取った人工知能が、食料調達法違反者たちへの執行許可を下した。
SF
公開:20/11/09 07:00
更新:20/11/09 04:11

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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