あの日見た鳥

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鮮やかな黄色が目の前を横切る。
黃茗荷だ!
美しいフォルムのそれは、木に留まるとトコトコと幹を登りだす。かと思うとくるっと頭をさげて今度はトコトコと幹を下る。

木登り上手はスズメ目オハギ科の小萩も同じだが、下りはだめだ。登りも下りもできるミョウガ科の黄茗荷をいつか見たいといつも願っていたから、黄色の茗荷が飛んで来た時はすぐに分かった。が、カメラのシャッターを切るが早いか、黃茗荷はくるっと幹の裏にまわると、パタパタ・スーッと飛び去ってしまった。爽やかな香りを残して。

はて。
何か素晴らしいものを見た気がしたが何だったかな。もう忘れるなんてひどい物忘れだ。写真を見返すと、端に流れる黄色が写っている。あ、黃茗荷か。忘れぬようにと黃茗荷の名で新しいフォルダを作ろうとすると、既に同じ名のアルバムがあった。中に並ぶ沢山の風景写真。どの写真にも、黄色の筆でサッと撫でたような掠れた線が入っていた。
公開:20/11/08 06:16
更新:20/11/08 13:36

マーモット( 長野県 )

初投稿は2020/8/17。
SSGで作品を読んだり書いたり読んでもらえたりするのは幸せです。趣味はほっつき歩き&走り(ながらの妄想)。
 

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