今日から

鋏を手に、鏡の前に立つ。そして、静かに息を飲んだ。

高校時代、何もかもが誰も彼もとお揃いだった。流行りのものがあれば、クラスの女の子達と一緒に買い物に出掛けた。食べる物も同じもの。帰りには必ず自撮りをして、みんな、それぞれのSNSアカウントに投稿した。
『お出かけ』
『おそろい』
『仲良し組』
『うちらズッ友！』
そんなタグを付けて。
本当は嫌だった。流行りのものだからって、好みはあるし、本当は違うものが食べたかった。SNSだって、別にやりたくなかった。
でも、一人だけ浮くのが嫌で、ずっと誤魔化してきた。

今日から、私は大学生だ。地元から離れて、一人暮らし。
ここには、お揃いを強要する人は、誰もいない。
「···よし」
鋏で、髪を切る。みんなとお揃いのヘアアクセを付けるために、伸ばしていた髪。
パサリ、と髪の束が落ちる度に、頭が軽くなり、私の心も軽くなった。

「今日から自由だ！！」