一人暮らしの老婆

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老婆は天気が良い日は庭に出て、多くの盆栽・植木や花の手入れに余念が無い。ある時縁日に行き、大事に育てれば幸せの花が咲くと言う盆栽を見付けたが高いので、店の前でどうしたものかと迷っていた。店主が貴女なら大事にしてくれそうだから、特別に値引きしてあげますと声を掛け、その誘いに思い切って買った。

以来、盆栽を大切に育てて幸せの花を咲かせなければと、日差しが傾き日陰になると、あわてて日の当たる位置に盆栽を動かしたり水をやったり面倒を見た。誰からも見ても他の植木鉢や花に比べ依怙贔屓でもあった。

老婆が外出すると、盆栽は一人ポツンとしていたが、快く思っていない他の植木や鉢達が、枝で突っついたりしたので、倒れて鉢から抜け落ちていた。
この様子を見ていた烏に、私を山へ運んで下さいと息も絶え絶えに頼んだ。烏は盆栽に似た枝を置き山里へ逃してやった。
老婆はそれとは知らずに枯れ枝に、今日も水やりをしている。
ファンタジー
公開:20/11/06 10:22

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