ミラージュ・パレス

合わせ鏡。
光が永遠に反射し続けるその合間から、奥を見やる。

僕であるはずの誰かが一人、異なる動きをした。
ひょっこりと頭を傾けて、どこかへ走り去っていく。

君は誰、キミハダレ。

鏡の中へ飛び込むと、そこは光の世界。
数多の光線が飛び交うガラスの迷路。遠くに誰かがいる。

僕は走り出す。

君は消え、また現れる。
パルメニデス・アレーテイア・ロゴス。
パルメニデス・アレーテイア・ロゴス。

鏡から鏡へ、有から無へ、理性から感覚へ。

溢れる光の海。
君は誰のもの、キミハダレノモノ。

広い場所に出る。
青白い火球が中空で光り輝いている。
ひとりぼっちの太陽は涙を流す。地面が揺れ、集まる光の中心にあの影を見つける。

誰かが僕を見下ろしている。
口を動かしているのが見えるが、言葉は届かない。
僕が手を伸ばすと、天井の明かりが部屋を照らしていた。

目をこすった指が、少しだけ濡れた。