論告、求刑、ファムファタル

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「──論告。
2XXX年、我ら全人民統一連合は運命すら掌握した。不慮の事故も、突然の病も我々には関係がない。全ての出来事は絶対運命確定機関〈モイラ〉によって定められている。我ら人民はゆりかごから墓場まで、あらゆる不条理、理不尽に脅かされることなく幸福な人生を送ることができる。だが、一般人民管理番号D-273はXX月XX日、自動走行車両内において、同じ大学に通う一般人民管理番号D-274と視線を合わせた。この結果、D-274は2年後に運命の恋人が現れるにもかかわらず、D-273に微笑みかけることとなった。これは明らかに『運命偽装罪』及び『偽装運命強要罪』の構成要件に該当する。相当法条を適用の上、再教育に処するのを相当と思料する」
 傍聴席から賛同の声があがる。
 D-273は氷が触れ合うように笑った。
「ああ、そんな切ないこと言わないでください。私はただ、彼とご縁があっただけなのですから」
SF
公開:20/11/05 23:09

香月文香

趣味で小説書いてます。

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