茶漬湖の底へ

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 香り立つ緑色の水上を、海苔ボートで滑る。バランスを崩せばアツアツの茶しぶきを浴び、たちまち火傷を負ってしまうので、気を付けなければならない。
 ここは茶漬湖。
 湖底にはご飯が沈み、周囲には湯気が立っている。地域によっては、お茶の量が少なく、ご飯が氷山のように湖上に飛び出ていることもあるらしいが、ここの水深は深い。気を抜いて落下すれば、二度と帰っては来れないだろう。
 ここを底なし沼と呼ぶ者もいる。
 地獄、と呼ぶ者も。
 だが、それを承知の上で、やり遂げなければならないことがある――白米。湖底の白米。その中に眠るお宝を探し出し、引き上げることが目的だ。困難な試練であることは分かっていたので、きちんと準備はしてきた。採掘スプーン、掘削フォーク、爪楊枝ピッケル……等々。これだけ揃っていれば、あの巨大な米の塊にも立ち向かうことが出来るだろう。
 伝説の宝、梅干し。
 必ず持って帰らなければ。
ファンタジー
公開:20/11/05 22:43

ぢろ吉郎


11/4~11/13の期間、「勝手に秋のお茶漬けデー」と題しまして、お茶漬けの物語を投稿中!(ストーリーに繋がりはありません)
11/4:「御茶ノ漬駅へようこそ」
11/5:「茶漬湖の底へ」
11/6:「神々しきお茶漬け」
11/7:「お茶漬け勇者の箸と匙」
11/8:「茶漬中毒」
11/9:「米どころ、茶漬けの祟り」
11/10:「茶が先か、卵が先か」
11/11:「檻の中。お茶漬けと一人」
11/12:「お茶漬け博物館」
11/13:「明日のお茶漬け」
お茶漬け、完結。充実したお茶漬けデーになりました……!
Twitter、ゆった~りと更新予定です。
https://twitter.com/dirokichiro?s=09

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