ゆかり鳥

13
10

「手紙のやり取りも、今回で最後になると思います」
そんな一文から始まっていた。
「私はよく手紙を書いていました。
誰に見せるでもない、自分の本心を吐き出す手紙を。
ある日いつものようにベランダで書いていると、小さな鳥が手紙をくわえて行ってしまったんです。
それが何の因果かあなたに届き、以来鳥を介してやり取りをしていますね。
前回くれた手紙を読んで、あのときのことをふと思い出しましたよ。
書いてくれてましたよね。
会いませんかというメッセージと住所を。
正直かなり悩みました。
顔も知らないのに会って大丈夫なのかって。
でも私、」

コンコン。
ノックの音がして、僕は一瞬顔をあげた。

「でも私、決めました。
いつまでもあの鳥が手紙を運んでくれるとは限らないから。
次は直接お会いしましょう」

コンコン。
再びノックの音がする。
僕は足早に玄関まで行き、スコープも覗かずにそっとドアを開けた。
公開:20/11/07 13:08

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容