悪縁、ほどきます。

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縁切り、縁結びというものは一筋縄ではいかない。
地方の社でちんまりと祀られている神は、常々そう考えている。
大きな都会の社の神ならともかく、地方の社でできる縁結びや縁切りは、たかがしれている。
神といえど参拝する人間のことしか分からない。
地方の人間の数など一定で、その人間の中で縁切り、縁結びをしなければいけない。
よって小さな社の神は、しばしば縁のリサイクルをする。
「ああまた来た」
今日は年配の女性が神に参拝にきた。
縁結びと縁切りを願う絵馬をからんと鳴らして結びつけていく。
「困るなあ。本当に」
女性に絡みついた糸を解く。
そうしてその紐を、別の人間と結び直した。
その人にとっては悪縁でも、全く別の人にとっては良縁というケースが多々ある。
そこで小さな神は、悪縁を解いては、良縁に変わりそうな人に結び直すのだ。
解いて結ぶ。解いて結ぶ。
田舎の縁結びの神も、楽ではないのである。
ファンタジー
公開:20/11/07 12:31
更新:20/11/07 12:33

七田 次美( 東京都 )

SFとミステリが好きです。
Twitter:https://twitter.com/Nana11830

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