頭痛

　頭が痛い。
　朝起きると、まるで頭の内側から誰かが金槌でノックでもしているかのような頭痛に襲われた。
　かといって、それを理由に会社を休むわけにはいかない。今日は会社の存続が左右されるほどの大事な商談があるし、夜は接待があるのだ。部下に代わりを頼むのは荷が重いだろう。
　しかし、会社に行く身支度をすればするほど、その頭痛は激しさを増していく。家を出ようとすると、その場にしゃがみこんでしまうほどの痛みに襲われた。あまりの激痛に耐え兼ねて私は出勤を断念した。


　その日の昼、頭痛が少し落ち着いてテレビをつけると、バス転落事故のニュースが流れた。中央線をはみ出してきた反対車線のダンプカーを避けようとしたが、そのはずみでガードレールを突き破って、そのまま崖から転落したらしい。テレビに映し出されている、黒い煙がもくもくと立ち込めるそのバスは、私が毎朝出勤に利用している路線バスだった。