エム(つづき)

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カナがエムの観察を続けて数日後、エムは動かないまま小文字の“m”から大文字の“M”に変化した。
ある日の夜、今度は“M”になったエムが逆さまにひっくり返って大文字の“W”となった。その次の瞬間、エムは“W”のまま眩い光を放ちながら、満天の星が輝く北の夜空に向かって飛び立った。
カナは、エムの行方を部屋にあった望遠鏡で急いで追跡すると、エムは北の夜空を飛行しながら、さらに巨大な“W”となり、北極星の近くに位置するW形のカシオペア座のとなりに寄り添うように停止した。
翌朝、カナがテレビでニュース番組をみていたら、カシオペア座が双子になったと大騒ぎになっていた。
カナは、エムとの別れは悲しかったが、北の夜空を眺めれば、いつでもエムに会える気がして淋しくはなかった。
エムは今夜もカシオペア座とともに美しく煌めいている。エムが英語のノートから飛びだした小文字の“m”だったことはカナだけの秘密だ。
ファンタジー
公開:20/11/06 19:34
『とってもふしぎな創作ドリル』 「ストーリー04 エム」 エム 夜空 北極星 カシオペア座

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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