標本小屋

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ズシャン ズシャン ズシャン ズシャン。くるぶしまで積もった落葉を踏み分けリズムよく歩く。秋の山歩きが好きだ。落葉達とのおしゃべりに誘われるように森の奥へ進むと、今にも潰れそうに小さな小屋が立っていた。蔦に覆われた壁の隙間から黒ずんだ石レンガが見える。蔦の這うドアノブを引っぱる。ブチブチブチ…ツルが切れて小屋の中に一気に光が差し込んだ。

クシュン!眩しさにくしゃみが出た。足元にはいくつもの小瓶。糸?網?しゃがんで蓋をあけ中身を広げてみる。細く白い糸が日の光にキラキラ輝く。流線形、楕円形、手の平形…それは葉脈の標本だった。ブナ、カシワ、モミジ…

奥には一際大きな瓶が転がっている。身長ほどある瓶から、絡まる葉脈を取り出し、千切れないように丁寧に広げる。線形、ハート形、手の平形、頭形…
スーッ。背中に氷が流れる感触に、身体が凍りつく。

美しく解かれた脈が、日の光にピンク色に輝いている。
ホラー
公開:20/11/05 00:01

マーモット( 長野県 )

初投稿は2020/8/17。
SSGで作品を読んだり書いたり読んでもらえたりするのは幸せです。趣味はほっつき歩き&走り(ながらの妄想)。
 

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