同じ場所で

『どうして女の子はだめなの？』
あの頃の自分の声が蘇ってくる。
そう、どうしてもだめだった。
女として生まれた以上、夢の場所に立つことはもちろん、そこを目指すことさえ出来なかった。
けれど、今日…

目の前に広がる緑の芝生。香る土の匂い。
そこで躍動する選手たちは、文字通り光り輝いている。
私が目指すことさえ出来なかった舞台に辿り着いた彼らを、私は違う視点で、けれど同じ場所で見つめている。
追いかけてきた夢の過程は全く違う。でも目指していたのは同じ場所。
ここからキミたちの精一杯をしっかりと見つめているから。
お互い、最後まで駆け抜けようね。

彼らの輝きをいっぱいに感じながら、マイクのスイッチを入れる。
一つ息を吐いた。さあ、私の夢舞台が始まる。
「お待たせしました。第一試合、北東高校対西南高校の試合はまもなく始まります。まず守ります北東高校の、ピッチャー相川くん…」