龍の飛ぶ朝

4
4

夜明け前、天空から地上を見た龍が烏に聞いた。

「のう、烏や。この地の人間は悲しんでおるのか? 天道が開くと言うのに皆下を向いておるではないか」

「つらいことが多いのでしょう。近頃は疫病や、季節の異変、暮らし向きが良くならず、希望が絶たれているのではないかと」
銀杏の枝で羽を休めていた烏は龍へ答えた。

「なにやらかわいそうだの。何か我にできることはないかの」

「それならお姿を見せてはいかがでしょう。吉兆と喜ぶと思いますよ」

「そうか。それは良き案じゃな。しかし、我が空に上がると天道と相俟って光が強すぎ、初めて見る者は大層驚くかもしれんな」

「では雲の衣を纏って空に駆け上がってはいかがでしょう。今なら早朝ゆえ、いい塩梅になるのでは?」

「良き。そういたそう」

天空に駆け上がる龍の、その美しい体から溢れでる光は地上にはらはらとこぼれ、歩く人々の頬を撫でていく。
ファンタジー
公開:20/11/04 15:44

さとうつばめ( 東京 )

東京生まれ。
読書するジャンルは時代もの多め。ふふ。

*プロフィールお堅いので変えました。
書くの面白くて連投しましたが、長く続けるためにゆるゆるやっていこうかな。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容