縁（ゆかり）詐欺

「俺だよ俺。今、関が原の南宮山にいるんだけど、すげぇんだよ！」
「亨か？　そんなとこで何してるんだ？」
「ゼミの合宿だよ。それより、新発見の古文書にうちのことが書いてあるんだ」
「うちは代々弁当屋だぞ。そんな……」
「聞いてよ！　うちは毛利家にゆかりある弁当屋だって書いてあるんだ！」
「そんな馬鹿な……」
「毛利家ゆかりの弁当って売り出せるんだぜ！　でも、この発見って、うちにとってはすごいんだけど、歴史的にはソレホドで、研究費がないんだ。３００万円あれば、ちゃんと、ゆかりを証明できるんだって」
「そうか。金はあるぞ。どこにもっていけばいいんだ？」
「今から助教授がそっちへ行くから、お金を渡してよ。すげえよな。じゃあね」
　チン
　証拠はご先祖が全て消したはずなのに今になって……
　弁当屋の主人は、関ヶ原の密約が記されているであろう、その古文書を隠滅すべく、助教授を拉致尋問する準備を始めた。