私の豚汁だけ肉が入ってない

28
11

「私の豚汁だけ肉が入ってないんだけど」
スープの移動販売車で私は店員に文句を言った。
「おめでとうございます!」
「はい?」
「それはとてもレアなことですよ。例えて言うなら、チキンカレーを頼んだのにチキンがカレーに入ってないくらいレアです」
「いや、そりゃそうだろうけどもさ。ちっとも有り難くはないよ!」
「おめでとうございます!」
店員は私の言葉を無視して、目尻の涙を拭った。
「すごくおめでとうございます!」
「いいから肉くれよ!」
すると、後ろに並んでいた小さな子供の声がした。
「いいなあ。肉が入ってないなんて、うらやましいなあ」
さらにその親らしき男が言う。
「え、肉が入ってなかったんですか!?本当に?すごい!」
その声を聞きつけて周囲の視線も私に集まってきた。
「わーおめでとう!」
温かい拍手に包まれる。
あれ?
いい、のか?…肉、なくても。
なぜか許してしまいそうになる自分がいた。
その他
公開:20/11/05 21:48

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容