いちご農家

僕？　いちご農家さ。この仕事も大変でね。
まずは早起きしてあちこちの新聞社や出版社から
山程の原稿を頂いてくるんだ。

その原稿を畑に並べて文章の誤字脱字やら、余計な文章がないかを丹念にチェックして、要らなければ躊躇なく切る。

切り取った文章はいちごいちごに分解する。
こちらは家畜の資料用としてなのであまり時間はかけられない。

畑と同じでこうして風通しをよくしないといいいちごができないのさ。

こうしてきれいに手直しされた文章からよさそうな単語を選んで取り出していくのさ。

間違って「死ぬ」とか選んじゃ駄目だよ！　毒いちごができちゃうからね。


そういえば、君にぴったりのいちごがある。食べてご覧。

今食べさせたのは「夢」。
過去の君からの手紙から取り出したんだ。どうだい、夢を思い出せた？

こう言って日々の生活にくたびれていた私に手紙と夢を残して、彼は消えた。