月を引く

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からりと晴れた満月の夜に、月を引く。
月へのびる赤い糸を引き、満月を凧にして走る。
月光を背に、私の影が長く長く伸びた。
私の小指に引かれる満月を見るのはひどく愉快だ。
この遊びができるのも来年までだと思うと名残惜しい。
来年になれば、赤い糸を照射する小指のデバイスは要らなくなってしまう。
月にいる「運命の人」と結婚するからだ。
そのあとは小指のデバイスは管理局に取り上げられてしまう。
成人までしかデバイスは与えられない。私は十九だから、今年で最後だ。
月の結婚相手に照射された赤い光で、月を引く。
私のお相手も、地球を凧にしたりしているだろうか。
SF
公開:20/11/05 14:36
更新:20/11/05 20:38

七田 次美( 東京都 )

SFとミステリが好きです。
Twitter:https://twitter.com/Nana11830

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