冬空アイス

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「この寒いのにアイス?」
「好きなんだから良いだろ」
学校帰りに立ち寄ったコンビニで、彼はいつも決まってアイスを買う。夏ならともかく、冷え込み始めた最近は見ているだけでこちらも寒い。そう告げると、
「俺が好きで食ってんだからいーんだよ」
その繰り返しである。これから先もずっとこんなことを言い続けるのだろう。その時は、そんなことを漠然と考えていた。

「いきなりだけど、俺、今日でこの学校とお別れします」
あまりに突然の別れに、言葉も何も出なかった。家庭の都合だそうで、もう、今日の昼にはこの街を出るんだって。
私服姿で教室に現れた彼は、先生と、私達にそう告げて、親が待っているからと教室を出て行った。別れを惜しむ声は、その日教室から耐えることは無かった。

一人の学校からの帰り、コンビニでアイスを買った。公園のベンチに座り、齧り付く。
「さっむ」
彼もまた、遠い場所でアイスを食べてるのだろうか。
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公開:20/11/05 13:55

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