風邪ひきの特権
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私の母はシングルマザーで、忙しい人だった。家で一緒に過ごした記憶は殆ど無く、私が学校から帰ると、テーブルの上には、ラップのかかった一人分の食事が用意されているだけ。それが当たり前だったから、特に何とも思わなかった。
ある日、熱が出て学校を早退した。ふらふらしながら家に帰る。当然家に母はいない。着替えることすら億劫で、玄関の鍵を閉めた後、私は自分の部屋に行って、そのままベッドの中に沈んだ。
カチャカチャと、何かの音がする。うっすらと目を開けると、誰かが部屋にいた。
「···だれ?」
「あらやだ、お母さんの顔忘れたの?」
母だった。
「仕事は?」
「休んだわよ。先生から連絡来たから」
そう言って、すりおろしたリンゴの入った器をくれた。
「休まなくて良かったのに」
「アンタ、手が掛からない良い子だけど、こういう時ぐらいワガママ言いなさい」
そう言って頭を撫でる母の手に、思わず私は縋り着いた。
ある日、熱が出て学校を早退した。ふらふらしながら家に帰る。当然家に母はいない。着替えることすら億劫で、玄関の鍵を閉めた後、私は自分の部屋に行って、そのままベッドの中に沈んだ。
カチャカチャと、何かの音がする。うっすらと目を開けると、誰かが部屋にいた。
「···だれ?」
「あらやだ、お母さんの顔忘れたの?」
母だった。
「仕事は?」
「休んだわよ。先生から連絡来たから」
そう言って、すりおろしたリンゴの入った器をくれた。
「休まなくて良かったのに」
「アンタ、手が掛からない良い子だけど、こういう時ぐらいワガママ言いなさい」
そう言って頭を撫でる母の手に、思わず私は縋り着いた。
その他
公開:20/11/03 14:23
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