冷たい風

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その日2個目のコンドームをペニスから外している時、
彼女はベッドに横たわったまま、他の人と結婚するのと言った。
一瞬の沈黙とだらしなく頭を垂らしたペニスが、言葉の意味を理解できていない自分と重なり、恥ずかしかった。
その時、取り乱したり問い詰めたりもできたはずだが、僕は平静を装った。
何を言えばいいのかが分からなかったし、おまけに僕の右手にはまだ使用済みのコンドームが存在している。行き場を失った僕と僕の遺伝子は、彼女によってその存在を否定されているかのように感じられた。
僕の反応にも興味を示さない彼女は、ソファーの上に脱ぎ捨ててあった服を素早く着て、元気でねと言って部屋を出て行った。
ベッドに横になると、微かな温もりと彼女の匂いが僕の皮膚と鼻を通して伝わった。僕は握りしめていたコンドームをゴミ箱に捨てた。
窓を開けると冷たい風が吹いていた。
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公開:20/11/03 01:59
更新:20/11/03 02:37

ひじり

たまに書く人。
元テレビ番組の製作会社勤務。
元シナリオセンター(東京)在籍。

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