少年の見た夢
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「お宝発見!」
瓦礫の山でクロが叫ぶ。
木陰で本を読んでいたイチが面倒くさそうに顔を上げた。
「ほら」
ぽんと投げて寄越した物が膝の上で転がる。
「うわ、人形の首投げるなよ」
イチは可哀想だと服の裾で顔の汚れを落とす。
「瞳を良く見ろよ」
クロに言われてはたと気づく。
「まさか、"蒼い夢"か?」
かつてこの町が栄えていた頃、宝石と同等かそれ以上と称賛された硝子職人がいた。その職人のジュエリーを求めて各地から裕福な家の召し使いが我が主にと店に押し寄せた。町の者はそれを羨ましく見ていたが、そのうち妬みに代わり、嫌がらせを受けた職人は豪商と共にこの地を去ったといわれていた。その硝子が通称、蒼い夢だ。
「売ったらマシな職に就けるかな」
クロはまだあるかもと瓦礫に手を突っ込む。イチは人形の瞳がそれに似せたものだと知っていた。服の中に隠す曾祖父が残した幻の硝子にそっと触れた。
瓦礫の山でクロが叫ぶ。
木陰で本を読んでいたイチが面倒くさそうに顔を上げた。
「ほら」
ぽんと投げて寄越した物が膝の上で転がる。
「うわ、人形の首投げるなよ」
イチは可哀想だと服の裾で顔の汚れを落とす。
「瞳を良く見ろよ」
クロに言われてはたと気づく。
「まさか、"蒼い夢"か?」
かつてこの町が栄えていた頃、宝石と同等かそれ以上と称賛された硝子職人がいた。その職人のジュエリーを求めて各地から裕福な家の召し使いが我が主にと店に押し寄せた。町の者はそれを羨ましく見ていたが、そのうち妬みに代わり、嫌がらせを受けた職人は豪商と共にこの地を去ったといわれていた。その硝子が通称、蒼い夢だ。
「売ったらマシな職に就けるかな」
クロはまだあるかもと瓦礫に手を突っ込む。イチは人形の瞳がそれに似せたものだと知っていた。服の中に隠す曾祖父が残した幻の硝子にそっと触れた。
ファンタジー
公開:20/11/03 22:01
射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
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