有能すぎた男
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「嘆かわしい……あまりにも嘆かわしい。ワシの軍門に下ったものは、皆ぬるま湯につかったように堕落し、何をするにも無気力。手の届く範囲だけにで必要な物事を全て済ませるようになり、体は衰える一方だ」
老人の盃を握る手に力がこもる。注がれた酒が小刻みにゆれ、今にもこぼれそうになっていた。
「それがワシのせいだというのか!厳しい寒さを乗り越える術を与えてきたのだぞ!その恩恵も忘れ、まるで飼いならされた家畜ではないか」
手元の盃を一気に飲みほし、空になったそれを見つめ、老人は続けた。
「いや……ワシらという存在が、みなを堕落させるなら仕方がないのかもしれん。寒さぬ苦しむことのないように、と切に願った我らからすれば、むしろ堕落こそ喜ぶべきことなのかもしれん……」
「――あなたは有能すぎたのです、『こたつ様』」
「そうよの。その通りじゃわ……」
男は着崩れ、赤く染まった腹中をさらしながら笑った。
老人の盃を握る手に力がこもる。注がれた酒が小刻みにゆれ、今にもこぼれそうになっていた。
「それがワシのせいだというのか!厳しい寒さを乗り越える術を与えてきたのだぞ!その恩恵も忘れ、まるで飼いならされた家畜ではないか」
手元の盃を一気に飲みほし、空になったそれを見つめ、老人は続けた。
「いや……ワシらという存在が、みなを堕落させるなら仕方がないのかもしれん。寒さぬ苦しむことのないように、と切に願った我らからすれば、むしろ堕落こそ喜ぶべきことなのかもしれん……」
「――あなたは有能すぎたのです、『こたつ様』」
「そうよの。その通りじゃわ……」
男は着崩れ、赤く染まった腹中をさらしながら笑った。
ファンタジー
公開:20/11/03 20:45
たけのこです。
諸事情によりきのこたけのこ論争には加担できません。
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