狸の怪

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狸夫婦の棲み家に人間の子供が寝ていた。何でもするから居させてくれという。子供を二回巣立ちをさせた親ではあるが、人間の子供を育てるのは勝手が違う。きっと親が探しに来るだろうと好きにさせる事にした。
「名前は何という」
「分かんない」
家に帰る途中で転んで頭をぶつけたという。面倒なものを拾ったと雄の狸は思ったが、ふっくらとした狸顔に情が湧くのも本当であった。
「お前の名前は末蔵だ。俺たちの子供で一番下の子という意味だ」
そういうと、末蔵は嬉しそうに笑った。
それから狸夫婦と人間の子供の奇妙な生活が始まった。何も出来ない末蔵に山で生きる術を教えた。沢で蟹をとる際びしょ濡れになり、服を脱がせて驚いた。末蔵のお尻にふさふさな尻尾がはえていた。引っ張ると、術が解け元の子狸に戻った。
「お前、化けてたのか。誰の子だ」
「わかんない」
雌の狸が末蔵をぎゅっと抱きしめ、私たちの子だと言った。
ファンタジー
公開:20/10/31 20:55
更新:20/10/31 23:52
たぬきの山 皆さんの狸の話を読んで 思い付いてしまいました すみません

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

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