縁会場

「大変お待たせしました」
　私は真っ白な空間に現れた受付席に着いた。
「前世でのお務め御苦労様でした。ここは『縁会場』。前世で御縁のあった方々のうち、貴方様と来世でも御縁をと希望されている方と再会できる場所です。そのドアの向こうでお会いになれます」
　あの世でも胸の痛みは感じるのだな。
「ドアを開けない選択はできますか？　私は幼くして両親を亡くした後、身体が次第に動かなくなる病気を発病しました。その後は出来るだけ人と会わずに暮してきた。怖くて心を閉ざしてきたのです。御縁と呼べるような付き合いは無かった。この期に及んでまた落ち込みたくはないですから」
「実は貴方様が亡くなられてから50年が経過しております。貴方が残された日記が書籍化されまして。その収益も慈善団体に寄付されました。SNSでも多くの方を励ましてこられましたね。御案内の後、私も縁会場に入る1人です」
　縁会場は温かな涙に包まれた。