クリウニ

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海女さんが水中を深く素潜りしていた。アワビやサザエ、ホタテのほかにウニなどの豊富な海の幸が獲れる。
最近、海の底では、棘を持った黒いウニに混じって、緑や黄緑、茶色のウニが数多く見られる。
不思議に思った海女さんが、それらのウニを捕まえて、陸にあがったときに中身を確認してみた。
包丁で切ってみると、ウニの中からクリに似た実が出てきた。浜辺で網焼きにして食べると、驚いたことに焼き栗のような味がした。
実は、海の近くに大学の水産研究所があり、遺伝子操作によって、外見がそっくりのウニとクリを掛け合わせ、クリに似たウニ、つまり「クリウニ」が出来上がったのだ。
水産研究所の養殖場でクリウニを飼育し、さまざまな生態系実験を行っていたところ、クリウニが海に流出され、瞬く間に分裂して異常繁殖したらしい。
クリウニは、秋の味覚としてたちまち人気となり、今や「海のミルク」がカキなら、「海のクリ」はクリウニだ。
その他
公開:20/11/01 07:03
海女 アワビ サザエ ホタテ ウニ クリ 浜辺 網焼き 焼き栗 水産研究所

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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