約束

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「また会おうね」
と、約束をした。
その日から僕は、ずっと彼女を待っている。

僕がいるそこは、とても綺麗な場所だった。たくさんの花が咲いている。彼女は花が好きだから、きっとここを気に入ってくれるだろう。

ある日、通り掛かった老人が僕に声を掛けた。
「お若いの。アンタ、ずっとそこにいるようだが、大丈夫なのかい?」
僕は、「約束なんです」と答えた。すると老人は、「そうかい」とだけ言って、どこかへ行ってしまった。

老人だけでなく、小さい子供や大学生、親子連れなど、たくさんの人が僕の横を通って行く。僕は、その中に彼女を探す。そんな日々を繰り返していた。

「お待たせ」
「!」
数年後···いや、数十年後に聞こえた懐かしい声。振り返ると、しわくちゃになった彼女がそこにいた。
「随分可愛いおばあちゃんになったね」
「貴方は変わらないね」
彼女の手を握る。
「さぁ、行こうか」

二人で、天国へ。
その他
公開:20/10/30 13:47

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