秋缶

32
22

我が家のキッチンには、古い西洋の空き缶が置いてある。日本では鎖国が終わり、幕末の江戸から明治時代になって、文明開化のころの空き缶と言い伝えられている。
開国とともに欧米の外国人が日本を訪れるようになり、当時は蒸気客船で日本の港に着いた。
ある鷲鼻の老婆がヨーロッパから秋の日本へ旅行でやって来た。空飛ぶ菷に跨がって辿り着き、魔女と名乗っていたらしい。
開港されたばかりの横浜に住んでいた好奇心旺盛なご先祖は、この魔女と偶然出会って仲良くなり、鎌倉の紅葉を案内したところ、お礼にもらったのが空き缶ならぬ秋缶だった。
この秋缶、普段は空き缶だが、秋だけ不思議な缶に様変わりする。
空き缶に蓋が付き、中身がスープで満たされるのだ。食べて空き缶になると、再びスープが満たされる。オニオンスープ、コーンポタージュ、トマトスープーーいろいろ楽しめた。
今日はハロウィン。秋缶の中身はパンプキンスープで満たされた。
ファンタジー
公開:20/10/31 07:00
キッチン 西洋 空き缶 文明開化 魔女 横浜 鎌倉 紅葉 ハロウィン

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容