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目の前にたこ焼きがある。
僕が食べたのは三つ、姉は四つ。常識的に考えて、残り一つは僕のものである。
「ところで、あの子とはどうなってんの?」
不意打ち。だがその手には乗らない。
「べつに。ふつーだよ」
「ふつー?」
頭を傾け、下から覗き込んでくる。
「ふ・つ・う。可もなく不可もなく、喜びもなく悲しみもない」
姉は小さくため息を付いて目を細め、幸薄い子ヤギを見下ろすようにして僕を眺めた。
先週公園で話をしているところを偶然姉に見られたのだ。いい雰囲気だったとか言われて否定しながらも無意識にほくそ笑んでしまったのが現状の元凶だ。
「男は度胸よ」
「どうぞ放っておいてくださいな」
そのときピンポーン、と突然の呼び鈴。
じっと姉を睨んだまま、後ろ手に通話のスイッチを押す。彼女だった。
「あ、うん、え? いまから? いくいく」
視界の端で姉がもぐもぐやっているのが見えたが、僕はもう気にならなかった。
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公開:20/11/03 07:00

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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