木曜日と思いきや金曜日

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 物凄くお腹が空いて、シワシワになった胃の形が鮮明に頭に浮かぶ。
 グウゥゥゥっと腹が鳴り、とうとう足に力が入らなくってしまい、アスファルトに溶け込むようにして倒れこんでしまった。
 「はぁぁ……ぁああ」
 アスファルトに顔面が近づいた時、あの妙に凝縮した特有の匂いを私の鼻は正確にとらえた。絶対に美味しくはない、非常に科学的なあの匂い。だが、不覚にも、食欲が湧く。
 「くぅぅぅぅぅ」
 このアスファルトを舐め回し、歯を立て、噛みちぎりたい。が、そうしてはならないという理性。いい大人のやる所業じゃない。
 震えていると、トツットツッとヒールの音が近づいてきて、チリィチリィとアスファルトを踏みにじりながら私の前で立ち止まった。
 見上げると美しい女性。彼女はショートケーキが乗ってある白いお皿を持っていて、それを自慢げに私に見せつけてから、バスケットボールのように回した。
 ギザギザと涎が蠢く。
青春
公開:20/10/31 00:27

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