あとはリモートで。

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パカラッパカラッパカラッ。
ヒヒーン!
馬に乗った仕事が追いかけてくる。
私はこの世界が恐ろしくなってオフィス街を逃げ出した。ビルからビルへ。路地から路地へ。頼れるのは三本の足と、逃げ切るんだという強い気持ち。たとえ馬に追いつかれて、鼻のフニフニや、その大きな口でハミハミされたとしても絶対に仕事は突っぱねる。たてがみの美しさに気を許してはならない。瞳のやさしさはかりそめだ。一度仕事を受ければ馬脚を現すに違いない。
私は駆ける。馬よりもマジで。私は駆ける。人参がなくても。街を抜け里山を越えて。
そのときだ。右端の鼻の穴に鳥が飛びこんできたのは。
私は一本の足を止めた。それは雁の群れ。次々と飛びこんでくる雁に私の四つある鼻はすべて塞がってしまった。バードストライク。私は推進力を失い、残る二本の足も動かなくなった。
モンゴルの大平原に大群の仕事の馬が迫りくる。もう終わりだ。ここで働くしかない。
公開:20/08/28 16:36

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