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 マスダさんは友人の科学者が髪の毛についての研究に成功したと聞いて喜び勇んで彼を訪ねた。マスダさんは後頭部にわずかに毛が残っていたが、あとはツルツルだった。
 友人の研究室には、培養液の箱の中に黒々とした毛が生えそろっていた。
「この生えた毛を集めて、今度は自分の頭に植え替えればいいということなんだね?」彼は歓喜して聞いた。
「いえいえ。そんなことは出来ません。この毛は、刈り取るとモシャモシャに枯れて萎れてしまうんです……。私がした研究は、「マスダさんの毛がこれほど大きく育つ可能性がある」ことを証明して、諦めから希望を芽生えさせるというものです。どうです、可能性を追求する大きな気持ちがあなたに芽生えてきたでしょう?」
 マスダさんは、毛は芽生えず、期待が芽生えるというこのことに、少し納得のいかない悲しい目つきで透明な箱に覆い被さるようにして、中で育っている毛の束を見つめているのだった。
その他
公開:20/08/28 16:09

N(えぬ)( 横浜市 )

読んでいただきありがとうございます。(・ω・)/
ここに投稿する以外にも、自分のブログに同時掲載しているときがあります。

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