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 一人の男が靴を頭に乗せていた。それを見た別の男が聞く。
「なぜ靴を頭に乗せているんですか」
「コレは屋内用の靴だ。靴を頭に乗せることで、落とさないよう姿勢も良くなる」
「お辞儀はどうするんです」
「必要ない。握手がある」
 なるほど、とその男も靴を頭に乗せた。

 瞬く間に流行が広がった。
 靴乗せ帽子を含めて新たな流行となり、人々はこぞって靴を頭に乗せた。
 今まで歩ければ何でも良いとしていた人たちも、頭の上に乗せるとなれば下手なものは使えない。高級靴の市場もどんどん拡大した。
 流行は凄まじく、その年のGDPの0.2%は頭に靴を乗せたおかげと言われた。

 冬が来て、あちこちからコンコンと咳が聞こえる。ウイルス性の風邪が流行した。
 一人の医師が警告を出す。
「ウイルスは靴に付着するのです」

 あっという間に流行は収まった。
SF
公開:20/08/29 10:35

八川克也

ショートショートは難しい。

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