魚拓株式会社

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魚拓株式会社は、池や川、湖沼、海などで「ギョギョトレイン」と呼ばれる水中列車を運行している。主な乗客は、まだ泳ぎに慣れていない子供の魚や、水の抵抗に弱い年老いた魚たちだ。
「魚拓」という社名からもわかるように、魚の形を転写することによって、さまざまな車両を導入している。
サメやマグロのように速く走行するのに適した紡錘形、タイのように浅瀬の岩場や珊瑚礁などの複雑な地形で急発進したり方向を変えるのに適した側扁形、アンコウやコチのように水中の底で走行するのに適した縦扁形、細長くクネクネと走行するのに適したウナギ形、球形でゆっくりと走行するのに適したフグ形がある。
魚拓株式会社では、新たな路線を開拓するため、大深度の海中を走行する特急「ディープフロンティア号」を開発している。深海魚の協力を得て多種多様な魚拓を入手し、車両の形を改造中だ。
魚のための路線を拓く魚拓株式会社から目、いや魚眼が離せない。
SF
公開:20/08/29 07:02
魚拓 紡錘形 側扁形 縦扁形 ウナギ形 フグ形 大深度 深海魚 魚眼

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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