空想行司

本場所中に大事故が起こった。横綱の上手投げに行司が巻き込まれて、頸椎骨折の大けがをしたのだ。
あの狭い土俵に男三人は狭すぎる。行司をデジタル化して、フォログラフィーで土俵上に再現しようという声が上がった。いわば空想行司だ。
ここで相撲協会は若いファンを取り込むために、ひとつの仕掛けをした。空想行司をおもいっきりイケメンにしたのだ。
すると空想行司を目当てにファンが集まってきた。
こうなると空想行司の顔をいつも観客に見せなけばならない。力士の陰に隠れそうになると素早く移動させ、ときには空まで飛ばせた。
空を飛ぶイケメンの姿に、国技館はアイドルのコンサートのような賑わいだ。
ところが、また重大事故が発生した。土俵下にいる勝負審判が、転落した力士の下敷きとなり腰椎捻挫の大けがをおったのだ。
さっそく相撲協会は空想勝負審判を導入し,、さらにはコロナ対策として空想力士導入の議論が……。