笑わないバイヤーマン

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初夏の日が射す喫茶店の窓辺で、俯いた女は長い髪をかき分けながら少しだけ上を向き、やっと言った。

「私は、ずっと想いを寄せている人がいるんですが、その人は結婚していて、つまり、その」

「不倫」

白いスーツの男がそう言うと、女は目をそらせた。

「まだ、そこまでは。ただ、このままだと……。そこで、賀白さんの話を聞いて。私の、あの人と結ばれたいと願うこの想いを、買っていただけませんか」

ふむ、と男は顎をさすった。

「二百万が相場です。だがお勧めはしません……。詮索はしませんが、貴方は私を誤解している」

女は首を振った。

「いずれ私は自分を抑え切ることができそうにありません。お願いします」

男は深く息を吸った後、しぶしぶ頷いた。

「よろしい。貴方の願い、買いましょう」


紅葉が血の色に染まる頃、女は首を吊った。

心に穴が空いたようで、何も手につかない。

遺書にはそうあった。
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公開:20/08/27 16:11

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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